ONAN


16ミリ、モノクロ、7分、音楽:刃根 康尚
第4回ブラッセル 国際実験映画祭(1964年)特別賞

English




「この作品には、1人の青年がヌード写真に火ばしで穴をあけたのち、巨大なプラスチックの卵(中西夏之の作品)を生むというストーリーがある。『オナン』は対象不在の欲望に関する作品で、この欲望は自らはらんだ巨大な卵というオブジェの出現によって、主体が対象化される。しかも他人(少女)の出現を機会として、主人公がこのオブジェを抱えたまま倒れることにより、この欲望は戯画化される」(芸術と非芸術の間)。
「しかしこの作品はオリジナルだけでは終わらず、さまざまな変化―増殖あるいは消滅―をはじめた。たとえば多種類の反復上映、全フレームに対するパンチ入れ、などの実験である。これらの実験によって作品は形骸化し、イメージの幻影性をもあきらかにした。」
飯村隆彦


「ストーリーの基本的なフレームワークは、型にはまっているが、ストーリーを語る飯村の手法は、愛の新しい認識を私にもたらした。フィルムについてこれ以上説明しうるものはない。たとえば、ブレッソンのフィルム、BALTHAZAR(これも愛について)に関して、エキスパートが総動員しても、私には徒労に終わるとしか思えない。オナンは、飯村が、多くのアバンギャルド達が扱いかねている物語風素材を扱うことが出来ることを示していると私は思う。もともと飯村は、劇映画作家の感覚をもっているようだ。」カール・リンダ (「フィルム・カルチャー」, 1967)

「『オナン』(1962)では青年がヌード写真を見るうちに興奮してくる。彼は熱したヒバシで何度もハッとさせるような攻撃をその写真に加える。そして明らかにそれと分かる様子でマスタベーションをする。次に我々が目にするのはベッドの上で転げ回る彼の姿で、彼はとうとう(作り物の材料でできた)大きな卵を生む。その卵を体内にこすりつけたのち彼は外に飛び出し一人の女にそれを渡す。彼女が受け取らないので彼は胎児の形に身を屈ませそのまま映画は終わるのである。『オナン』は女性の肉体を冷淡に利用するエロティシズム には生気がなく本質的に不安をもたらすものであることを示している。男が写真に攻撃する中で暴かれる女性へのサディスティックな態度は、結局現実の女性との関係が彼を永遠の胎児にしてしまうことを暗示している。」
スコット・マクドナルド (「アフターイメージ」、 1978.4)